いよいよ、3日目です。
この日は、おばさんと一緒に、ボクが高校時代に“甲子園”と彫った木を見るために、おばあちゃんの家があった、益田市喜阿弥町を訪れました。
ここで、“家があった”としたのは、実は、おばあちゃんの家、この数年前に壊れたんです。
ぺったんこに。笑
おばあちゃんは、山の中にポツンとある一軒家で、ずっと一人暮らしをしていました。
木と土壁でできた、昔ながらの家でした。
水道も繋がっておらず、水は近くのため池から、バケツで汲んでしました。
お風呂も薪で沸かし、トイレもぼっとん便所でした。
その横には、防空壕が残ってました。
そして、なぜかその防空壕がおばあちゃん専用のトイレでした。笑
周りには畑がたくさんあり、おばあちゃんは野菜を作っていました。
あるとき、足を滑らし骨折し、それを機に、おばあちゃんは広島へ引っ越しました。
そのすぐあとでしょうか。
おばあちゃんの家は崩れたそうです。
「おばあちゃんの家が壊れた」という話は、前から聞いていたので、実際どのようなものか、自分の目で見たかったということもあり、実際に足を運んでみると、
本当にぺったんこでした。笑
悲しさ、切なさ、寂しさといった感情すら吹き飛ばし、思わず笑ってしまうほどの、いい壊れっぷりでした。笑
「こんなにぺったんこなん!?」
驚きと満足感で、思わず“甲子園”と彫られた木を見るという、本来の目的を忘れて、帰りそうになりました。
気を取り直し、おばあちゃんの家の裏にある木を見て、「あー、この木やこの木」と懐かしみました。
まぁ、家の裏にあるといっても、家はぺったんこなんで、ずっと丸見えでしたけどね。笑
木を見ると、確かに、何かを彫ったような、木の皮が剥げている部分はあるのですが、文字が一切ありませんでした。
6年という歳月が、ボクの“甲子園”と彫った字を、完全に消し去っていました。笑
「あっちゃー。そら、消えるわな」って、ぺったんこになった家に思わずつぶやきました。
“そら、そうやで”と、ぺったんこになった家も答えてくれたように感じました。
原付で3日もかけて、はるばる来たのに、目的を達成できず終わることが悔しすぎたので、目標を“原付で中国地方一周”に変更しました。
島根県を出て、山口県を少しかじり、南下して、広島、岡山と突っ切って、兵庫へ帰ることにしました。
その日の晩は、もう一泊おばさんの家に泊まりました。
つづく